お茶の国、台湾。日本でもその名をよく知られる台湾銘茶・凍頂烏龍(トウチョウウーロン)の特徴といえば、ナッツのような香ばしい香りと熟した果実を思わせる甘い味わい。この独特の風味を生み出すには、熟練の焙煎技術が不可欠です。
凍頂烏龍の産地・鹿谷郷(ルーグーゴウ)に茶園を持ち、栽培から製茶まで行う劉志豪(リュウ ジーハオ)さんは、ルピシアが信頼を寄せる生産者の一人。取材班の訪問を快く迎えてくださいました。
劉さんによると台湾では最近、焙煎の強いお茶が減ってきてしまったのだそう。「もっとこの魅力を感じてもらいたい」と話す劉さんに、“香ばしい”には日本人にとって“ほっとするような心地良い香り”というニュアンスがあることを説明すると、「ぜひ日本の皆さんに喜んでいただけるお茶にチャレンジしたい」と、ルピシアのために新たに香ばしいお茶を作っていただけることになりました。
早速、お茶作りを開始。何かヒントを得られるかもと期待を込め、まずは劉さんが未体験という日本茶を一緒に飲んでみることに。焙じ茶、玄米茶、煎茶の中で劉さんの興味を誘ったのは「台湾高山茶のように爽やかな青い香りがする」という煎茶。「焙煎して華やかな香りを引き出してみます」と実践していただくと、ほんのりと香ばしく華やかで、そして力強い味わいに仕上がりました。焙煎前からすでに、出来上がりの香りが想像できるそう。原料の特徴を見極め、火入れの時間や温度を調節する勘どころも、親子3代に引き継がれる技の一つです。
試作を重ね、劉さんに作っていただいたのはご自身の茶園の茶葉を使った2品。一つは台湾高山茶を低めの温度でじっくり焙煎し、香ばしくてフルーティーな香りを引き出したもの。もう一つは凍頂烏龍の伝統的な味わいを感じられるものが完成しました。